せっかく侍女になったのに、奉公先が元婚約者(執着系次期公爵)ってどういうことですか2 ~断罪ルートを全力回避したい私の溺愛事情~
「彼女は俺の専属侍女。寮生活中も、俺の世話をしたいって聞かなくてね。今回同行することになったんだ」
「え? 私、そんなこと言ってな――」
クラウス様のほうを見ると、無言の笑顔で圧をかけられ、私は口をつぐんだ。目が笑ってなさ過ぎて怖い。
「ふーん。……あなた、お名前は?」
「あ、えっと、ユリアーナと申します。どうぞ、よろしくお願いいたしますっ!」
慌てて自己紹介をして頭を下げる。
次に顔を上げると、マリー様はまた私のことをじろじろと見ていた。纏わりつく視線が気まずくて、コンラート様のほうを向くと、ばちっと目が合ってしまった。
「……よろしくね。ユリアーナさん」
すると、コンラート様は私に微笑みかけてくれた。天使のような柔らかい笑みに、私は優しい人がいてよかったと心底思った。
「それじゃあ、これから僕たちで学園を案内するよ。今日は午後の授業はお休みだから生徒たちもいないし、ゆっくり見て周ろう」
コンラート様からそう言われ、学園を周ることとなった。私は通わないが、出入りすることはあるだろうということで、クラウス様に同行する。生徒会室を出ると案内人はいなくなっており、ここからはコンラート様とマリー様が案内人になるのだと勝手に解釈した。
アトリア魔法学園も、エルムと同じく二年制の学園らしい。こちらももちろん、過半数が貴族の生徒だという。稀に魔力が高い庶民の生徒もいるらしいが、なんせ学費が高いため、相当魔力が高く学費補助を受けない限り入れないとか……。
まずクラウス様が通うこととなる二年の教室を案内され、そこから食堂、職員室、数々の実習室、生徒たちが自由に過ごせるサロン、庭園などをぐるりと周っていく。
あまりに広くて、明日にはもう覚えていなさそうだ。クラウス様は一発で全部覚えられているのだろうか。
「クラウス様は魔法の才がとても優れていると聞きましたわ。わたくし、一緒に授業を受けられるのが楽しみで、今日がとっても待ち遠しかったのっ」
歩きながら、マリー様が声を弾ませて言う。声だけでなく、なんなら身体もぴょんぴょんと跳ねさせている。クラウス様に会えたのが相当嬉しいようだ。
「それに、こんなに素敵な方だなんて、想像以上でしたわ! エルムの魔法学園では、さぞご令嬢からおモテになられたのでは?」
クラウス様の前情報は〝隣国の魔法学園で、成績優秀の公爵令息〟くらいしか聞かされていなかったのだろうか。
たしかにクラウス様はかなりかっこよくて、普通にしていたら人当りもいい。マリー様は思いのほかイケメンが来たことに、心を躍らせているようにも見える。
「あはは。そんなに褒められると照れるな」
クラウス様は質問には答えずに、当たり障りのない返事をしている。
「あ、でも、うちのコンラート様も負けていませんのよ。学園行事のパーティーが開かれるたびに、コンラート様と踊りたい令嬢たちが長蛇の列を作るくらいですから」
なぜかマリー様が自慢げだ。だが、その光景は容易く想像できる。
クラウス様もそれくらいの人気は誇っていたが、悪役令嬢時代のユリアーナがクラウス様に近づけないようにしていたから、列ができるなんてなかったけど……。
ということは、コンラート様は婚約者がいないのだろうか。もしいたら、その相手が黙っていないと思う。
「マリー、大袈裟だよ」
「嫌ですわ~コンラート様ったら、謙遜しちゃって」
コンラート様がマリー様を窘めるも、マリー様はにやにやと笑ってそう言った。
「……よし。これで一通り案内は終わりかな。またわからないことがあれば、いつでも言って。同じクラスメイトだし、力になるよ」
「ああ、ありがとう」
最後に案内してもらった温室の前で、クラウス様とコンラート様が穏やかな雰囲気で微笑みあう。なんというイケメンとイケメンのぶつかり合い。
「え? 私、そんなこと言ってな――」
クラウス様のほうを見ると、無言の笑顔で圧をかけられ、私は口をつぐんだ。目が笑ってなさ過ぎて怖い。
「ふーん。……あなた、お名前は?」
「あ、えっと、ユリアーナと申します。どうぞ、よろしくお願いいたしますっ!」
慌てて自己紹介をして頭を下げる。
次に顔を上げると、マリー様はまた私のことをじろじろと見ていた。纏わりつく視線が気まずくて、コンラート様のほうを向くと、ばちっと目が合ってしまった。
「……よろしくね。ユリアーナさん」
すると、コンラート様は私に微笑みかけてくれた。天使のような柔らかい笑みに、私は優しい人がいてよかったと心底思った。
「それじゃあ、これから僕たちで学園を案内するよ。今日は午後の授業はお休みだから生徒たちもいないし、ゆっくり見て周ろう」
コンラート様からそう言われ、学園を周ることとなった。私は通わないが、出入りすることはあるだろうということで、クラウス様に同行する。生徒会室を出ると案内人はいなくなっており、ここからはコンラート様とマリー様が案内人になるのだと勝手に解釈した。
アトリア魔法学園も、エルムと同じく二年制の学園らしい。こちらももちろん、過半数が貴族の生徒だという。稀に魔力が高い庶民の生徒もいるらしいが、なんせ学費が高いため、相当魔力が高く学費補助を受けない限り入れないとか……。
まずクラウス様が通うこととなる二年の教室を案内され、そこから食堂、職員室、数々の実習室、生徒たちが自由に過ごせるサロン、庭園などをぐるりと周っていく。
あまりに広くて、明日にはもう覚えていなさそうだ。クラウス様は一発で全部覚えられているのだろうか。
「クラウス様は魔法の才がとても優れていると聞きましたわ。わたくし、一緒に授業を受けられるのが楽しみで、今日がとっても待ち遠しかったのっ」
歩きながら、マリー様が声を弾ませて言う。声だけでなく、なんなら身体もぴょんぴょんと跳ねさせている。クラウス様に会えたのが相当嬉しいようだ。
「それに、こんなに素敵な方だなんて、想像以上でしたわ! エルムの魔法学園では、さぞご令嬢からおモテになられたのでは?」
クラウス様の前情報は〝隣国の魔法学園で、成績優秀の公爵令息〟くらいしか聞かされていなかったのだろうか。
たしかにクラウス様はかなりかっこよくて、普通にしていたら人当りもいい。マリー様は思いのほかイケメンが来たことに、心を躍らせているようにも見える。
「あはは。そんなに褒められると照れるな」
クラウス様は質問には答えずに、当たり障りのない返事をしている。
「あ、でも、うちのコンラート様も負けていませんのよ。学園行事のパーティーが開かれるたびに、コンラート様と踊りたい令嬢たちが長蛇の列を作るくらいですから」
なぜかマリー様が自慢げだ。だが、その光景は容易く想像できる。
クラウス様もそれくらいの人気は誇っていたが、悪役令嬢時代のユリアーナがクラウス様に近づけないようにしていたから、列ができるなんてなかったけど……。
ということは、コンラート様は婚約者がいないのだろうか。もしいたら、その相手が黙っていないと思う。
「マリー、大袈裟だよ」
「嫌ですわ~コンラート様ったら、謙遜しちゃって」
コンラート様がマリー様を窘めるも、マリー様はにやにやと笑ってそう言った。
「……よし。これで一通り案内は終わりかな。またわからないことがあれば、いつでも言って。同じクラスメイトだし、力になるよ」
「ああ、ありがとう」
最後に案内してもらった温室の前で、クラウス様とコンラート様が穏やかな雰囲気で微笑みあう。なんというイケメンとイケメンのぶつかり合い。