親愛なる魔王の君へ～転生したので、魔王の側近になります！～

そう言って、ビオラさんはニコリと笑う。

「……これ以上は教えないよ。本来の目的は達成出来たし、僕はそろそろーー」

クラル様を抱えたままどこかへと行こうとするビオラさんに向かって、父様は「待ってよ」と声をかけた。

その時、風を切る音が近くから聞こえてきて、僕は音がした方を向いてから杖でモンスターの攻撃を防ぐ。

モンスターに向かって、攻撃魔法を至近距離で放ってモンスターを吹き飛ばした。地面に着地したモンスターは、地面を蹴って僕に飛びかかってくる。

防御魔法でそれを防いだ後、防御魔法を解くと同時に今度は風属性の魔法でモンスターを遠くへと吹き飛ばした。

「……おい、待て！」

父様の声が聞こえてきて、僕は声がした方を見る。ビオラさんの背中には巨大な黒い羽が生えてて、僕は驚いた。

「返して欲しかったら、大魔王様のところまで来な。いつでも、待っているから。大丈夫だよ。クラルさんをこれ以上傷つけないって約束する」

そう言って、ビオラさんはクラル様を抱えたままどこかへと飛び去ってしまう。それを合図にするかのように、モンスターたちは逃げていった。

「……八咫烏！」

僕が八咫烏の名前を呼ぶと、父様は「ルーチェ、追いかけなくていい。一旦家に戻るぞ」と声をかけてくる。

「……でも」