親愛なる魔王の君へ～転生したので、魔王の側近になります！～

「ルーチェ様！」

森を歩いてると前からリルが走ってきて、僕は立ち止まると「リル？」と首を傾げる。

嫌な予感がするのは、僕の気のせいだろうか。

「ルーチェ様……実は、その……」

僕の前で立ち止まったリルは、何かを言いたそうに僕を見つめた。言葉が出てこないのか、リルは「えっと……」と言葉を詰まらせる。

「リル、落ち着いて。ゆっくりで良いから、何があったのか話してくれる？」

「……すみません」

リルは僕に謝った後、何が起こったのかゆっくりと話してくれた。

急に勇者を名乗る者が来て、たまたま近くにいたクラル様が勇者を名乗る者を、戦いにくいからっていう理由で中に入れた……らしい。急いで僕に知らせた方が良いと思って、走って来たんだそう。

「なるほど。リル、知らせてくれてありがとう。急いで帰るよ」

そうリルに言って、僕は館まで走り出す。

急いで庭に入ると、クラル様が誰かに剣を向けてるのが見えた。

「え？何で、こんなところにアーサーとティムが？」

クラル様と対峙してるのは、数日前に会ったアーサーとティムだった。

『おかえりなさい。主人』

僕が2人がここにいることに驚いてると、八咫烏が声をかけてくる。八咫烏の足には、僕の持つ杖型の呪具があった。