親愛なる魔王の君へ～転生したので、魔王の側近になります！～

「ただいま、八咫烏……杖、持ってきてくれたんだ……ありがとう」

僕は八咫烏から杖を受け取ると、走ってクラル様たちに近づく。

……お願い。間に合って……！！

剣を片手にアーサーを見据えるクラル様と、クラル様に向かって剣を振り上げたアーサーの間に入って、僕はクラル様を守るように立つ。

そして、魔法で目の前に盾を作り出してアーサーの攻撃を防いだ。

「……ルーチェ！？お前、どうしてここに……」

その場から飛び退いたアーサーは、驚いた様子で僕を見る。盾を消しながら、僕は「どうしてって……ここは、僕の家だし……」と答えた。

「お前の家って……ここは、魔王が住んでる場所じゃ……」

「うん。そうだよ……僕は、魔王クラル様の側近を務めてるんだ。君たちが、どうしてここにいるのかは知らないけど……クラル様を傷つけようとするなら、ここから出て行ってくれないかな？」

僕はそう言ってから、戦闘態勢になる。僕の肩に、八咫烏が止まった。

「クラル様、下がっててください。この2人は、僕1人で相手をします」

「でも……それだと、ルーチェが不利なだけじゃん……相手は、剣術士と回復の専門家と呼ばれる職業の治療師だよ！？」