バイバイ、リトルガール ーわたし叔父を愛していますー
不毛な恋
高校2年生の夏。
すみれは週に活動日が1回だけの、しかも帰りが遅くなったりしない文芸部という地味なクラブに入部した。
活動内容は、図書室で好きな本の感想を言い合ったり、小説を創作して年に一回の文化祭で冊子を作るくらいのゆるいものだった。
家事を疎かにしたくなかったすみれにはぴったりのクラブだった。
同じ高校に入学した琴子との付き合いも7年目になった。
琴子は同じクラスの綿貫直人に恋をした。
陸上部の長距離選手である綿貫は、放課後になると広い校庭で黙々と走り込みをしていた。
琴子の付き添いで、すみれは綿貫や他の陸上部員が練習するさまを見学する、いわゆる「推し活」に付き合わされていた。
「琴子。こうして見てるだけじゃ気持ちは伝わらないよ?なにかアクションを起こしたら?」
すみれの助言に、琴子は少し沈黙したあと、何かを思いついた顔をして、すみれに手を合わせた。
「すみれ、綿貫君と親友の大原君と同じ文芸部だよね?」
「うん。そうだけど。」
綿貫は見るからに体育系男子という感じで、体格が大きくて陽気で友達も多いが、比べて大原悠は色が白くひょろりとした体型の大人しい男子生徒だった。
そんな正反対の二人だけれど、家が隣同士で幼馴染らしく、はた目からみてもすこぶる仲が良かった。
いつも無表情な印象の大原が、綿貫と話しているときだけは、伸び伸びと表情豊かに笑っている。
文芸部での大原はいつも生真面目に、自前のノートパソコンで小説を書いていた。
昨年の文化祭で作った冊子で大原は、親友と二人きりになった世界で悪の組織と戦うという小説を載せていた。
すみれはうさぎに変身した女の子の冒険物語を書いた。
「大原君に頼んで、綿貫君とすみれと私と四人で、遊びに行けないかなあ?それで仲良くなれたら告白できるかも。」
「ふーん。」
今日の晩御飯は何にしようかな?
航君の好物のチキン南蛮タルタルソース付けにしようかな?
などと考えていたすみれは上の空で琴子の話を聞いていた。
「ふーん、じゃなくて、すみれが大原君に話つけて!」
「え?ええー?私が?なんで・・・。」
「アクション起こしたらって言ったのはすみれでしょ?」
「私、大原君とまともに話したこともないのに・・・。」
「いいじゃん。ね?お願い!」
そう琴子に泣きつかれて、すみれは断れなくなってしまい、渋々その大役を請け負うことになった。
すみれは週に活動日が1回だけの、しかも帰りが遅くなったりしない文芸部という地味なクラブに入部した。
活動内容は、図書室で好きな本の感想を言い合ったり、小説を創作して年に一回の文化祭で冊子を作るくらいのゆるいものだった。
家事を疎かにしたくなかったすみれにはぴったりのクラブだった。
同じ高校に入学した琴子との付き合いも7年目になった。
琴子は同じクラスの綿貫直人に恋をした。
陸上部の長距離選手である綿貫は、放課後になると広い校庭で黙々と走り込みをしていた。
琴子の付き添いで、すみれは綿貫や他の陸上部員が練習するさまを見学する、いわゆる「推し活」に付き合わされていた。
「琴子。こうして見てるだけじゃ気持ちは伝わらないよ?なにかアクションを起こしたら?」
すみれの助言に、琴子は少し沈黙したあと、何かを思いついた顔をして、すみれに手を合わせた。
「すみれ、綿貫君と親友の大原君と同じ文芸部だよね?」
「うん。そうだけど。」
綿貫は見るからに体育系男子という感じで、体格が大きくて陽気で友達も多いが、比べて大原悠は色が白くひょろりとした体型の大人しい男子生徒だった。
そんな正反対の二人だけれど、家が隣同士で幼馴染らしく、はた目からみてもすこぶる仲が良かった。
いつも無表情な印象の大原が、綿貫と話しているときだけは、伸び伸びと表情豊かに笑っている。
文芸部での大原はいつも生真面目に、自前のノートパソコンで小説を書いていた。
昨年の文化祭で作った冊子で大原は、親友と二人きりになった世界で悪の組織と戦うという小説を載せていた。
すみれはうさぎに変身した女の子の冒険物語を書いた。
「大原君に頼んで、綿貫君とすみれと私と四人で、遊びに行けないかなあ?それで仲良くなれたら告白できるかも。」
「ふーん。」
今日の晩御飯は何にしようかな?
航君の好物のチキン南蛮タルタルソース付けにしようかな?
などと考えていたすみれは上の空で琴子の話を聞いていた。
「ふーん、じゃなくて、すみれが大原君に話つけて!」
「え?ええー?私が?なんで・・・。」
「アクション起こしたらって言ったのはすみれでしょ?」
「私、大原君とまともに話したこともないのに・・・。」
「いいじゃん。ね?お願い!」
そう琴子に泣きつかれて、すみれは断れなくなってしまい、渋々その大役を請け負うことになった。