バイバイ、リトルガール ーわたし叔父を愛していますー
「もう、どうしたらいいかわからないよ。」
すみれはチキン南蛮を咀嚼し終えると、琴子からの頼み事を航と桔梗に話した。
「あはははっ!すみれが恋のキューピット役か。琴子ちゃんの初恋が実るかどうかはすみれの手腕にかかっているってわけだな。まあ、頑張れよ。」
そう言って白飯を口に入れる航にすみれは文句を言った。
「そんな他人事みたいに言わないで。冷たいなあ。」
すみれがそう泣きつくと、航は箸を置き、口元のタルタルソースをティッシュペーパーで拭き取った。
「仕方がない。知恵を授けてしんぜよう。ベタ過ぎるかもしれないが遊園地なんてどうだ?ジェットコースターに一緒に乗ったりすれば吊り橋効果で恋が芽生えるかもしれないぞ?」
「吊り橋効果?」
「そう。ジェットコースターに乗ると不安や緊張で胸がドキドキするだろ?それを心は恋のドキドキと錯覚するのさ。実際、困難を一緒に乗り越えた相手とは親密な状態になりやすい、と心理学では言われている。」
「ふーん。・・・航君は女の子と遊園地でデートしたことあるの?」
「そりゃまあ、何回かはね。」
自分で聞いておきながら、すみれは航の過去の彼女に激しく嫉妬し、泣きそうになった。
「なんだその顔は。焼きもちか?」
航はすみれの頭をポンと叩いた。
「最近はすみれの相手で忙しくて、女の子との付き合いなんて皆無だけどな。」
「ほんと?」
「ああ。すみれの勉強をみなきゃならないし、買い物や映画にも付き合わなきゃならないし、大忙しだ。」
すみれはその言葉に安堵して笑顔になった。
たしかに航は平日は夜7時までにきっちり帰ってくるし、土曜日はすみれに勉強を教え、日曜日は家でビールを飲みながらメジャーリーグで活躍する大谷をテレビ越しに応援したり、歴史の小説を読んだりしている。
女性とデートしている様子は今のところ見受けられなかった。
「いっそのこと、すみれもボーイフレンドを作ったらどうだい?」
桔梗が湯飲み茶わんを持ちながら、こともなげに言った。
「いやだよ。ボーイフレンドなんかいらない。」
すみれが即座にそう言うと、航がにやにやと笑った。
「すみれはまだまだお子ちゃまだもんな。」
「なに言ってんだい。私が最初にボーイフレンドを作ったのは14のときだよ。」
「お祖母ちゃんと私は違うの!」
すみれはいやいやをするように、首を横に振った。
「すみれはともかく・・・航、あんたも少しは結婚を考えな。この前もあんた宛に結婚式の案内が届いてたじゃないか。友達に先越されてる場合じゃないよ。」
「はいはい。わかりました。」
航はぶっきらぼうにそう言い、桔梗の言葉を適当に流した。
航君は私との約束を覚えているのだろうか?
たとえ覚えていたとしても、きっとあの日の必死の告白は一過性のはしかのような症状だったと思っているのだろう。
だからこんな軽口が叩けるのだ。
すみれは航を恨めし気にみつめた。
航君は私が結婚するまで独身でいるって誓ってくれた。
でも・・・いつかは航君が誰かと結婚する・・・そんな日がやってくる。
私はそれを耐えられるだろうか?
そんなことを考えながら食べるご飯は、まったく味がしなくなってしまった。
すみれは恐る恐る航に聞いた。
「・・・航君、本当は結婚したいんじゃない?」
すみれの不安そうな顔に航は子供をあやすような顔で微笑んだ。
「約束しただろ?すみれの幸せを見届けるまでは絶対にしないよ。」
航が約束を覚えていることを知り、すみれは安心した。
部屋に戻ったすみれはうさぎのららにこうつぶやいた。
「ねえ、らら。私の幸せは航君と一緒にいることなのにね。どうしてそれをわかってくれないんだろう。」
ららはそんなすみれを慰めるように、ぴょんとすみれの膝に乗った。
すみれはチキン南蛮を咀嚼し終えると、琴子からの頼み事を航と桔梗に話した。
「あはははっ!すみれが恋のキューピット役か。琴子ちゃんの初恋が実るかどうかはすみれの手腕にかかっているってわけだな。まあ、頑張れよ。」
そう言って白飯を口に入れる航にすみれは文句を言った。
「そんな他人事みたいに言わないで。冷たいなあ。」
すみれがそう泣きつくと、航は箸を置き、口元のタルタルソースをティッシュペーパーで拭き取った。
「仕方がない。知恵を授けてしんぜよう。ベタ過ぎるかもしれないが遊園地なんてどうだ?ジェットコースターに一緒に乗ったりすれば吊り橋効果で恋が芽生えるかもしれないぞ?」
「吊り橋効果?」
「そう。ジェットコースターに乗ると不安や緊張で胸がドキドキするだろ?それを心は恋のドキドキと錯覚するのさ。実際、困難を一緒に乗り越えた相手とは親密な状態になりやすい、と心理学では言われている。」
「ふーん。・・・航君は女の子と遊園地でデートしたことあるの?」
「そりゃまあ、何回かはね。」
自分で聞いておきながら、すみれは航の過去の彼女に激しく嫉妬し、泣きそうになった。
「なんだその顔は。焼きもちか?」
航はすみれの頭をポンと叩いた。
「最近はすみれの相手で忙しくて、女の子との付き合いなんて皆無だけどな。」
「ほんと?」
「ああ。すみれの勉強をみなきゃならないし、買い物や映画にも付き合わなきゃならないし、大忙しだ。」
すみれはその言葉に安堵して笑顔になった。
たしかに航は平日は夜7時までにきっちり帰ってくるし、土曜日はすみれに勉強を教え、日曜日は家でビールを飲みながらメジャーリーグで活躍する大谷をテレビ越しに応援したり、歴史の小説を読んだりしている。
女性とデートしている様子は今のところ見受けられなかった。
「いっそのこと、すみれもボーイフレンドを作ったらどうだい?」
桔梗が湯飲み茶わんを持ちながら、こともなげに言った。
「いやだよ。ボーイフレンドなんかいらない。」
すみれが即座にそう言うと、航がにやにやと笑った。
「すみれはまだまだお子ちゃまだもんな。」
「なに言ってんだい。私が最初にボーイフレンドを作ったのは14のときだよ。」
「お祖母ちゃんと私は違うの!」
すみれはいやいやをするように、首を横に振った。
「すみれはともかく・・・航、あんたも少しは結婚を考えな。この前もあんた宛に結婚式の案内が届いてたじゃないか。友達に先越されてる場合じゃないよ。」
「はいはい。わかりました。」
航はぶっきらぼうにそう言い、桔梗の言葉を適当に流した。
航君は私との約束を覚えているのだろうか?
たとえ覚えていたとしても、きっとあの日の必死の告白は一過性のはしかのような症状だったと思っているのだろう。
だからこんな軽口が叩けるのだ。
すみれは航を恨めし気にみつめた。
航君は私が結婚するまで独身でいるって誓ってくれた。
でも・・・いつかは航君が誰かと結婚する・・・そんな日がやってくる。
私はそれを耐えられるだろうか?
そんなことを考えながら食べるご飯は、まったく味がしなくなってしまった。
すみれは恐る恐る航に聞いた。
「・・・航君、本当は結婚したいんじゃない?」
すみれの不安そうな顔に航は子供をあやすような顔で微笑んだ。
「約束しただろ?すみれの幸せを見届けるまでは絶対にしないよ。」
航が約束を覚えていることを知り、すみれは安心した。
部屋に戻ったすみれはうさぎのららにこうつぶやいた。
「ねえ、らら。私の幸せは航君と一緒にいることなのにね。どうしてそれをわかってくれないんだろう。」
ららはそんなすみれを慰めるように、ぴょんとすみれの膝に乗った。