バイバイ、リトルガール ーわたし叔父を愛していますー
わがままな告白
春に倒れた桔梗は、一旦は家に戻れたものの再び発作を起こし再入院をした。

そしてその年の秋に病院のベッドで静かに息を引き取った。

葬儀は親戚とわずかな知り合いだけで小さく執り行われた。

すみれにとって人生で2度目の葬式の日は、両親の時と同じように冷たい小雨が降っていた。

すみれは桔梗の冷たい手を握り、涙をこぼした。

航は喪主として葬儀の手配や親戚への対応と悲しむ暇もなく、忙しく動いていた。

通夜の席ですみれは航から、白髪頭の老夫婦を紹介された。

「すみれ。このふたりは俺の京都での親父とお袋だ。」

「初めまして。すみれです。」

すみれが頭を下げると、品の良さそうなその老夫婦は、すみれを柔和な眼差しでみつめた。

「アナタがすみれちゃんね。航から話はよく聞いてますよ。真面目で素直ないい子だってね。」

「ありがとうございます。」

航が自分のことを他所で褒めてくれていることを知り、すみれは誇らしい思いで一杯になった。

「すみれちゃん。航は東京でちゃんとやっている?アナタの面倒をちゃんと見てくれているかしら?」

航の養母は心配そうに眉間を寄せながら、すみれに尋ねた。

「はい。航君はとても良くしてくれています。航君がいなければ、きっと今頃私は孤独に震えていたと思います。航君は私の命の恩人です。」

「おいおい。そんなに持ち上げても、何も出ないぞ?」

航は照れ臭そうに笑うと、珍しくすみれの頭に手を置いた。

航の養父が目尻に皺を寄せて言った。

「落ち着いたらふたりで京都の家に遊びに来なさい。待ってるから。」

「ありがとう。義父さん。」

そのやりとりで、航と京都の養父母の関係が穏やかで良好なことをすみれは知った。

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