バイバイ、リトルガール ーわたし叔父を愛していますー
航と桔梗
すみれは生まれ育った北海道から、航と桔梗が暮らす東京へと移り住むことになった。
航は一人で飛行機に乗って羽田空港へ着いたすみれを出迎えてくれた。
「一人でよく来たね。偉いぞ。」
航に頭をくしゃくしゃと撫でられて、新しい土地に舞い降りて、不安で一杯なすみれの心がほぐされていった。
航はすみれの荷物を持ち、すみれの歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれた。
近くの駐車場に停めてあった若草色のフィットの前まで来ると、すみれは助手席に、航は運転席に座りすみれのシートベルトを付けた。
「ハラ減ってるだろ?バアさんがご馳走を作って待ってるってさ。好き嫌いはないか?」
本当はひとつだけ食べられないものがあったけれど、それを言ってはいけない気がして、すみれは「ないです。」と小さな声で答えた。
「正直に言っていいんだぞ?俺はトマトがどうしても食えないんだ。いや、トマトにリコピンという身体に有益な栄養素が入っているのは理解している。しかし理解することとそれを受け入れることはまた別の問題なんだ。・・・で、すみれちゃんは?」
航が先に苦手な食べ物を教えてくれたので、すみれも打ち明けた。
「本当は・・・きゅうりが嫌いです。」
「そうか。きゅうりは95%が水分だ。別に食えなくても構いやしない。バアさんにはトマトときゅうりのサラダはNGだと伝えよう。」
「はい!」
すみれがそう元気に返事をすると航も大きく笑った。
「よし。いい笑顔だ。これからその花のような可愛らしい笑顔をたくさん見せて欲しい。それが君の叔父さんからの唯一のお願いだ。」
そう言ってハンドルを握る航の横顔を見ながら、なんの根拠もないけれど、この人に付いていけばこの先何があっても絶対に大丈夫、とすみれは思った。
「あの・・・。」
「ん?」
「叔父さんのこと・・・なんて呼べばいいですか?」
すみれの問いかけに航は少し間を置いてから言った。
「好きなように呼んでくれていいよ。叔父さんでもお兄さんでも。」
「じゃあ、航君って呼んでもいいですか?」
叔父さんやお兄さんではなく名前を呼びたいと思った。
「航君か。なんだか照れ臭いけど・・・じゃあそう呼んでくれ。俺も君のこと、すみれって呼ばせてもらうから。」
「はい。」
初めて航から「すみれ」と呼ばれ、なんだかくすぐったかった。
航は一人で飛行機に乗って羽田空港へ着いたすみれを出迎えてくれた。
「一人でよく来たね。偉いぞ。」
航に頭をくしゃくしゃと撫でられて、新しい土地に舞い降りて、不安で一杯なすみれの心がほぐされていった。
航はすみれの荷物を持ち、すみれの歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれた。
近くの駐車場に停めてあった若草色のフィットの前まで来ると、すみれは助手席に、航は運転席に座りすみれのシートベルトを付けた。
「ハラ減ってるだろ?バアさんがご馳走を作って待ってるってさ。好き嫌いはないか?」
本当はひとつだけ食べられないものがあったけれど、それを言ってはいけない気がして、すみれは「ないです。」と小さな声で答えた。
「正直に言っていいんだぞ?俺はトマトがどうしても食えないんだ。いや、トマトにリコピンという身体に有益な栄養素が入っているのは理解している。しかし理解することとそれを受け入れることはまた別の問題なんだ。・・・で、すみれちゃんは?」
航が先に苦手な食べ物を教えてくれたので、すみれも打ち明けた。
「本当は・・・きゅうりが嫌いです。」
「そうか。きゅうりは95%が水分だ。別に食えなくても構いやしない。バアさんにはトマトときゅうりのサラダはNGだと伝えよう。」
「はい!」
すみれがそう元気に返事をすると航も大きく笑った。
「よし。いい笑顔だ。これからその花のような可愛らしい笑顔をたくさん見せて欲しい。それが君の叔父さんからの唯一のお願いだ。」
そう言ってハンドルを握る航の横顔を見ながら、なんの根拠もないけれど、この人に付いていけばこの先何があっても絶対に大丈夫、とすみれは思った。
「あの・・・。」
「ん?」
「叔父さんのこと・・・なんて呼べばいいですか?」
すみれの問いかけに航は少し間を置いてから言った。
「好きなように呼んでくれていいよ。叔父さんでもお兄さんでも。」
「じゃあ、航君って呼んでもいいですか?」
叔父さんやお兄さんではなく名前を呼びたいと思った。
「航君か。なんだか照れ臭いけど・・・じゃあそう呼んでくれ。俺も君のこと、すみれって呼ばせてもらうから。」
「はい。」
初めて航から「すみれ」と呼ばれ、なんだかくすぐったかった。