バイバイ、リトルガール ーわたし叔父を愛していますー
どれくらいそうしていただろうか。

迫田がハッと目を覚まし、うつろな表情で虚空に視線を向けた。

すみれに手を握られていることに気付いた迫田は、ゆっくりと身体を起こした。

「ああ。すみれさんか。」

「迫田さん・・・大丈夫ですか?ごめんなさい。勝手に部屋へ入ったりして。」

「いや・・・心配してくれたんだろ?ありがとう。」

迫田はその汗ばんだ手ですみれの手を握り返した。

「君が手を握ってくれると、心にかかっている靄が晴れていくような気がする。」

「どんな悪夢を見ていたんですか?私で良ければ聞きます。」

すみれの真剣なまなざしに、迫田は重い口を開いた。

「わからないんだ。自分が何に悩み、何に苦しんでいるのか。それが判れば、何かが変わるような気がするんだが・・・。夢の中の俺は暗く長いトンネルの中を、ただ手探りで彷徨っている。孤独で身体が冷えて不安でたまらなくて。でも・・・」

「でも?」

「今日はいつもと違った。トンネルの向こうにある光がかすかに見えた。」

「・・・・・・。」

「すみれさん。君のお陰だ。君が手を握り、俺の側にいてくれたから・・・。」

迫田はベッドから降り、ふわりとすみれの身体を抱きすくめた。

「やっぱり俺は悪い男だな。君の了承を得ないでこんなことをして。」

「・・・・・・。」

「嫌なら振りほどいてくれ。」

「迫田さん・・・。」

すみれはその大きな背中に腕をまわし、迫田をきつく抱きしめた。

「迫田さん。私がいます。私が迫田さんを、もう決してひとりぼっちになんてさせません。」

「君は温かいな。」

「迫田さんの身体も温かいです。」

「すみれさん。・・・俺は君が好きだ。」

迫田はすみれの身体から離れ、その両肩を掴み、すみれの目をじっとみつめた。

迫田の左手は震えていた。

「君のそばにずっといたい。もう俺は君がいないと駄目なんだ。」

「迫田さん・・・」

「君は俺のたったひとつの光だ。俺の人生をその光で照らしてくれないか?」

その言葉を聞いたすみれは、瞳を潤ませ唇を噛みしめた後、大きく頷いた。

「はい。私は貴方と・・・一緒に・・・生きたい、生きていきたいです。」

「すみれさん。キス、していいだろうか。」

すみれの肩を掴む迫田の手に力が入った。

迫田の顔がすみれに近づき、その唇を捉えた。

激しく唇を吸われ、気の遠くなるような幸せに包まれたすみれは、もう何も考えられなくなった。

ただこのまま迫田の欲望に流されたいと思った。
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