溺愛ヴァンプはピュアな彼女を本能よりも愛し抜きたい。


「……っ」


私はその場から逃げ出しました。

保健室を飛び出し、廊下を走って――そのまま転びました。


「うっ、う〜〜……っ」


私はなんて我儘なのでしょう……。

誰でもいいから血や唾液を飲んで欲しいと思っていながら、いざその様子を見てしまうと嫌で嫌で仕方ないなんて。

私なんて身分不相応だとわかっているのに、図々しいですよね……。


これは皐月くんに尋ねて知ったことですが、暁月家は誇り高き純血の一族であり、決して人間とは結ばれないのだそうです。

仮にブラッディハニーと血の専属契約を結んだとしても、それは所謂愛人。
最悪ただの餌なのだそう。

やっぱり私がリユくんの恋人だなんて、今だけの泡沫の夢だったんですね――。


魔女である極月さんとはどうなのかわかりませんが、魔族のエリートである極月さんとなら、お似合いかもしれません。
ヴァンプにとって一番美味しいと感じるのが人間の血だそうですが、他の種族との婚姻も可能だそうですし……。

少なくともただの人間で、今は何もできない子どもの私なんかよりは、ずっと相応しいでしょう。


「……っ、リユくん……っ」


それでも好きでごめんなさい。
図々しく嫉妬してごめんなさい。

リユくん、お願いだから死なないでください。

餌でもいいから、あなたの傍にいることを許してください――……。


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