溺愛ヴァンプはピュアな彼女を本能よりも愛し抜きたい。
第3章
本能を超えた恋 side.リユ
「リユくん、私を食べて」
朦朧とする意識の中で、女の声が聞こえた。
匂いで恐らく極月イリアなのだろうと思った。
薄っすらと目を開け、迫ってくる極月の口を手で塞いだ。
俺が目覚めたことに驚いたのか、極月は藤色の瞳を見開く。
「……触るな」
「っ、どうして……!?」
「離れろ」
明らかに不快感を露わにした低い声に慄いたのか、極月は俺から後ずさる。
「リユくん、血を吸わないと死ぬかもしれないのよ!?」
「あんたの血はいらない」
「どうして!?」
「俺は小宵しかいらない」
「……っ!!」
「早く小宵を元に戻せ」
「……んで、なんであんな地味な人間なんかに……っ!ただ血が美味しいだけでしょう!?」
「黙れ」
この女の声は非常に耳障りだ。
余計に具合が悪くなる。
「――小宵を元に戻せ。」
「……っ、私は知らないわ……!」
「待て……、クソッ」
こんな体じゃなきゃ、追いかけられるのに……。
体中が怠くて仕方ない。
それでもあんな女の血なんていらない。
俺が欲しいのは小宵だけ。
でもそれは、血が美味しいからじゃない。
それだけじゃないんだ――。