溺愛ヴァンプはピュアな彼女を本能よりも愛し抜きたい。
* * *
エリートヴァンパイアとか言われる純血の暁月家に生まれた俺は、周囲の環境に辟易していた。
純血であることが誇りであり、非常に排他的な一族だった。
婚姻関係は絶対にヴァンプとしか結ばないくせに、父も母も兄たちも沢山の愛人を囲っている。
それは時に快楽を求めた相手であり、時にただの食料だった。
俺はそんな風に冷え切った愛のない家庭で生まれた。
「リユくん、好きよ」
「私の血を吸って?」
俺の周りにはいつも女たちが群がったが、そいつらは俺自身を好いているわけではない。
ヴァンプ特有の色香に惑わされ、快楽を求めているだけ。
そういう奴らに辟易しながら、俺も自分が生きるために血を吸った。
何の味もしない。ただの義務的な作業でしかなかった。
灰色の廃れた毎日を過ごす中、小宵は俺の前に突然現れた。
今日の食事は済ませたというのに、しつこく迫ってくる女たちから逃げていたら、突然眩暈がする程の強烈な甘い香りに誘われた。
「(なんだ、これは……!?)」
香りに誘われるがまま歩みを進めると、花壇に水やりをする一人の女の子がいた。
楽しそうに鼻歌を歌いながら、花一つ一つに大事そうに水をやる。
そんな彼女に目を奪われた。