溺愛ヴァンプはピュアな彼女を本能よりも愛し抜きたい。
「今日も元気に咲いてくれてありがとうございます!明日も素敵なお花を咲かせてくださいね」
え……、花に話しかけてる?
変な子だなと思いつつ、彼女から目が離せなかった。
なんて慈愛に満ちた瞳で花たちを愛でるのだろう。
こんなに優しくて純粋で美しいものを見たのは、生まれて初めてだった。
灰色に染まった世界が、彼女のいるところだけ温かい光が射しているように感じた。
「小宵ー!」
聞き覚えのある声がして、咄嗟に隠れた。
「マオちゃん!」
「また水やりしてたの?そろそろ寮に戻ろうよ」
「これは私の日課ですから。はい、今行きますね」
「今日の夕飯なんだろうね!」
「楽しみですね!」
楽しそうに笑いながら女子寮に帰っていく姿を見つめた。
あの子、マオの知り合いなのか?
化け猫のマオは中学から一緒の腐れ縁だ。
別に友達じゃないし特別仲が良いわけではないけど、俺にとっては数少ない話しやすい女子だった。
他の女子と違い、俺に全く興味ないから逆に絡みやすい。
言いたいことをはっきり言う性格のせいで敵を作りやすいマオが、あんなに笑って接する相手は初めて見た。
あの子、何者なんだろう?
とても興味を惹かれた。