溺愛ヴァンプはピュアな彼女を本能よりも愛し抜きたい。
君に接触するために敢えてこんな状態になったのに、真剣に心配してくれる姿を見て良心が痛む。
でも、それでも君の瞳に映りたかった。
「私の血でよければ、もらってください!」
「いいの?」
「はい!美味しくないと思いますが!」
シャツの襟から覗く首筋からは、咽せ返るような甘くて芳醇な香りが広がっている。
近づくと香りに酔いそうなくらい。
「……ありがとう」
「うっ」
騙すようなことをしてごめん、と心の中で謝りながら小宵の首筋に噛み付いた。
今まで味わったことのない、極上の甘さが俺を夢中にさせる。
なんだこの美味しさは?
この味を求めていたような、全身から震えるような昂りを感じる。
もしかしてこれが、ブラッディハニーというやつなのか――?
「…っ、大丈夫ですか……?」
しばらく本能のままに血を貪って吸ってしまった俺に、何の嫌悪感も見せなかった。
むしろ頬は蒸気して潤んだ瞳で見つめ、無防備に愛らしい表情を曝け出している。
俺はその瞬間、小宵に恋をした。
これは血を求めるヴァンプの本能なんかじゃない。
それ以上に小宵という一人の女の子が欲しいと思った。
もっと小宵のことが知りたい。
小宵の全てを暴きたい。
俺だけのものにしたい。
「俺、暁月リユ。君は?」
「み、蜜月小宵です……」
「小宵、俺の彼女になって。俺と契りを結んでよ」