御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 髪の毛をいじりながらそんなことを言う。好きにして下さい。そんな気持ちが目に出てしまった。

 「……なんか、変わったわね、水川さん。気をつけた方がいいわよ。私だけじゃなくて、椎名本部長にはたくさん本社にもファンがいるって話よ。若い頃の武勇伝もたくさんあるらしいから……。あなた、本部長にくっついているって噂になってるから……」

 「そうですか。べつにくっつきたくって、くっついているわけではありませんので……」

 「なら、私が担当でもいいわよね?本部長の案件はどちらの部もあるんだしね……」

 「本部長が了承されたらいいんじゃないでしょうか」

 「……了承しないから、諦めてくれ、悪いな清水」

 後ろから声がした。本部長が書類を手に、私の頭のうえに載せた。

 「こいつは吉崎から引き継ぎを正式にきちんと半年以上受けているんだ。皆が思うほど簡単な仕事ではないし、誰でもできるわけでもない。俺はこいつにやらせると決めているし、きちんとやってくれている。お前はいずれ今度の部長秘書にする予定だ」

 本部長が清水さんに言った。
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