御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 「いえ、私は本部長のほうが……二部でのお仕事のときの補佐は私がしましたよね。一部は水川さんでもいいですけど、うちの部の時は私の方が色々知っているしいいと思うんです」

 「清水が出来ないわけじゃないが、水川でいい。一応こいつは社長賞を取るほどの逸材なんだぞ。お前達はそこを忘れているようだな」

 本部長の最後のひとことは、清水さんだけでなく数人の女子社員に向けて言っていた。清水さんの後ろから、実は数人の女子社員がじっとこちらを見ていた。皆、本部長のファンだ。いつも廊下で積極的に本部長へ話しかけているのを見ている。私は彼女達のやっかみの相手になったということだろう。

 「さあ、仕事だ。いくぞ」

 本部長は私の頭を書類でポンポンと叩くと、背中を向けた。
 私は先輩方に頭を下げると背中を向けて本部長の後ろをついて行く。

 歩いているうちに涙が出てきた。
 初めてこんな思いをした。自分がやっかまれるような立場になるなんて、想像も付かなかったが、実際に目の前で言われると結構堪える。
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