御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい
 
 一応、濃いベージュのスーツに着替えた。ブラウスは薄いピンクで甘めのフリルがついている。リクルーターではなく、少し大人のイメージを考えた。今日この日に合わせわざわざ買っておいた。何しろ社長賞だもの。写真撮影もあるというし。
 
 本部長の部屋へ先に行く。合流して一緒に社長室へ行くことになっていた。
 本部長も背広にネクタイ。普段はネクタイを取って、ワイシャツで腕まくり。久しぶりに正装を見たけど、やっぱり格好いい。

 「なんか、水川のそんな格好初めて見たが、大人の女に見えるぞ」

 「私は一応立派な大人の女のはずなんですが……」

 「見た目は、な。中身がどうなのかはそのうち教えてもらおうかな」

 びっくりした。そんな格好で、そんな台詞言わないで欲しかった。恥ずかしい。

 「何、真っ赤になってんだよ。面白いな。からかいがいがある。楽しみだ」

 「……せっかく本部長のそのスーツ姿、すごく格好いいって褒めようと思ったのに、もうやめます」

 本部長が止まってしまった。
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