御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい
「はい、そうです」
私は本部長のほうを見た。彼は本社の人に囲まれている。
「……あいつは俺の息子であることも知ってるよね?」小声で社長が言った。
「あ、はい。存じています」私も小声で返す。
「あいつのサポートをしてやってほしい。できれば仕事だけではなく、そのうち精神面でも」
「……無理です」
「そのうちだよ。胸に留めて置いてくれればいい。頼んだよ」
そう言うと、背中を軽く叩かれた。
自分のことで精一杯なのに、本部長を支えるなんて出来るの?無理だ。定番の答えしか頭に浮かばない。
今の彼の姿を眺めていると、本当に憧れる女子社員が大勢いるのもうなずける。
私がぼんやりしていると、後ろから肩をたたかれた。