御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 「君の社長賞が決まったと聞いて、大喜びしてたら、すぐに産気づいてさ。いやはや君のお陰で出産も頑張れたんだと思うよ。よほど嬉しかったんだな。君のこと本当に可愛がっていたからね」

 私はその言葉に涙が出てきてしまった。思い出す。先輩の笑顔、優しさ。

 「……あ、え?どうして泣くんだよ」

 旦那さんが慌てだした。私がハンカチで涙を拭いていたら後ろから低い声がする。

 「田村、お前。水川泣かすとかいい度胸だな」

 「え?いや、俺何もしてないよ。紗良の話しただけで泣いちゃってさ。どうしたの、水川さん。俺、何かまずいこと言った?」

 本部長が私の肩を抱き寄せて、顔をのぞき込んだ。

 「大丈夫か?」

 「……嬉しくて。先輩が私の受賞を喜んで下さって、お子さんも無事生まれて。嬉しすぎて……」
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