御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 そう言うと、私の肩を抱いている本部長の手を指さして、笑っている。
 ふたりで赤くなって、離れた。田村さんはニヤニヤしてる。私は彼に言った。

 「田村さん、紗良先輩にそのうちお祝いを持ってうかがいたいのでまたメールしますとお伝え下さいますか?」

 「ああ。伝えとくよ。しょうがないから椎名本部長も彼女と一緒に来てもいいですよ」

 「……お前。相変わらずだな」

 本部長が睨んでる。

 「この戦いもようやく終わりが見えてきましたね。安心したー」

 田村さんが嬉しそうにしてる。私はふたりを見てオロオロするばかり。いっつも喧嘩してるんだよね。先輩の目の前でも平気でやってたし。やっぱり、独身の先輩を取り合ってたっていう話は本当なんだろうと思う。

 「そうだな。お前の言うとおり、俺の道も見えてきた」

 本部長がもう一度私の肩を抱き寄せて、優しい目で私を見た。田村さんは驚いている。
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