御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 頭を下げて、彼に頼んだ。

 「水川、言っている意味をわかっているのか?その仕事は椎名不動産との提携になるから、お前ひとりではなく、どこかの部署を作らないといけない。もちろん、うちの会社で稟議が通ればのはなしだ」

 「馬鹿ねえ、英嗣。通らないわけないじゃない。あの人は彼女の才能を理解して賞をあげたんでしょ。実際商品が売れまくってるって聞いてるし、私がこの話をもってきたと知ればあの人は反対なんて絶対しない。誓ってもいい、社長自ら社内をまとめて出来るようにしてくれるはずよ」

 「……母さん。大丈夫なのか?そんなことして、火の粉がふりかかるかもしれない」

 「あなたのためでもあるのよ、英嗣。あのいけ好かない後妻とあの兄が何しようと私がいるということを思い知らせてやる。あの会社を彼が立ち上げるとき、私も一緒に企画を立てて作ったの。株も取得していたし、もちろん会社名に私の名をあげた。それだけ私達にとって大切な会社なのよ」

 私はお母様が真剣な目で彼を説得しているこの場に自分がいていいのかわからなかった。それに、社長とお母様との関係を言葉の端々に知らされて驚くと同時に、本当に愛し合っていたんだろうとすぐにわかった。息子である英嗣さんへのお母様の愛を強く感じた。
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