御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい
 
 「お前の行く末次第だな。由奈はお前のことを心配しているんだろう。俺のせいだな……。とにかくこのプロジェクトを成功させればいいだけだ」
 
 「わかりました」
 
 「人選だが……最初は数人でいいだろう。人事の田村君とも相談して考えておいてくれ。頭はお前。それは決まり。ただし、お前自身が動くのではなく、あくまでも統轄役員もしくは部長としてだ」
 
 「……はい」
 
 やっと、あいつを橋本から離して俺だけのところに連れてきたというのに、また他のところへやるとどうなるか……おそらく毎日生き生きと仕事をするに違いない。俺のものにしたばかりなのに、この焦りは一体なぜだ。

 翌日。
 
 腹が立つのは、香那が妙に元気になって仕事をしだしたこと。
 俺の役員の秘書の仕事は彼女に不向きというわけではない。だが、かなり今までと違うことは確かだ。
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