御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 俺は、デスクの前に立ったまま、後ろを向いてしまった彼女の肩を支え、顔をのぞいた。

 「……ひ、秘書も本当はひ、引き継ぎたくなかった……」

 香那が泣いている。まずい、俺は理性が飛んで抱きしめた。

 「香那。悪かった。俺はお前を取られたくないだけだ。許してくれ」

 その時、ノックの音がした。

 返事をすると、秘書室長だった。香那の引き継ぎの件だろう。

 「悪いが今はとりこみ中だ。あとで秘書室へ顔を出す」

 扉を開けずに話すとわかりましたと言って帰って行った。

 「香那、大丈夫か?」

 「はい。すみません。本部長のためにも、お母様のためにもあちらで頑張りますから、本部長も許してください」
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