御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 涙がこぼれてきた。
 彼は目の前で目を大きく見開いて、驚いている。

 「いつも熱を出すって昨日の人も言ってた……そんなのダメです。もう私が側にいるのに、そんなのダメ。もうそういうふうに頑張りすぎるのはやめて……お願いです、身体を大切にして下さい」

 私がしゃがんで泣き出してしまったのを見て、本部長は急いで部屋のブラインドを下ろすと私の横に座って抱き起こした。

 「……香那。すまん、お前の気持ちを考えないで怒鳴ったりして、許してくれ」

 「う、ううう……」

 彼はソファへ私を座らせ、隣の腰掛けるとティッシュの箱を私の膝へおいた。
 そして、私の頭を抱き寄せた。

 「やっとわかったよ。俺は自分で気付いていなかったんだな。父に認められる成果を上げないと俺の居場所はないとずっと思っていた。あいつが入社してきたこともあって焦りがあったのかもしれない」
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