御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 「何、驚いてるんだよ。家政婦を辞めさせて、お前以外をこの家にあげることのないようにする」

 私が呆然としていたら、また顔を覗いて笑っている。

 「まずくないですか?会社にばれそうです。同じ所へ帰れば勘ぐられますよ」

 「別にいいだろ。俺の紹介で下の部屋を契約したと言えばいい」

 「交際を隠している意味がないじゃないですか!」

 「うるさい。会社では我慢するが、プライベートくらいは好きにさせろ。仕事ではお前と距離を取るようにしているんだ」

 確かに、周りに色眼鏡で見ていることもあって、彼が警戒して他人行儀にしてくれているんだとわかってはいる。でも冗談もほとんど言わなくなって、寂しいと実は感じていた。
 
 「……確かに、会社では冷たいですもんね。ホントは寂しいです。帰ってきたら優しくしてくれますか?」

 「香那、お前。そういう台詞を急に言うなよ。今からじゃ時間がないから可愛がってやれない」
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