御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 私は造形学科卒。本当はおしゃれな調理器具を作りたかった。開発が主体の子会社へ配属になったのも希望がそうだったからだと思う。今回の椎名不動産の提携は私が本来この会社でやりたかったことに近づいている。だからすぐにやりたいと彼に言ったのだ。

 「相変わらず、しゃれたデザインのお店をよく知ってるのね」

 「……そうか?」

 ビールを飲み干した彼の顔を見ながら話した。

 「どうして、建築士事務所を退職したの?就職はそこだったでしょ?」

 「……図面引いているだけじゃなくて、もっと大きな物を作りたくなったからだな」

 なるほど。言いたいことはわかった。

 「香那こそ。やるじゃないか」

 「え?」

 「……『社長賞』獲ったんだろ?驚いたよ。お前そういうタイプに見えなかったからな」
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