御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 「史人は付き合っている人はいるの?」

 「いや。結構すぐに転職を決意したんでそれどころじゃなかった」

 「そうだったんだ。びっくりしたなあ、マンションの下で会ったときは……まさか、担当者が史人だなんて……」

 「これも運命だな。俺たちどこか繋がってるんだな。何色の糸だろうな?」

 含みのある言い方をして笑っている。史人は大人びていて、割り切った性格。わからないことは彼に頼りきりだった。操縦されないように気をつけないと。操縦方法を理解されてるし……。

 とりあえず、笑ってごまかした。

 店を出ると、駅まで歩いて行く。

 「あの部屋に住んでるのか、それとも十階に住んでるのか、どっちだ?」

 身も蓋もない聞き方をしてくる。ああ、史人だなと思う。
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