御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい


 ショートカットのスーツ姿の女性と英嗣さんだ。
 酔っ払っている彼女の腕を引っ張り上げて、タクシーへ押し込んでる。
 ドアを閉めたが、発車しない。
 運転席に話しかけて、結局後ろに彼も乗った。
 ドアが閉まって、出発した。

 それを見ている私に気付いた史人は言った。

 「あれ、椎名さんだろ?お前大丈夫か?だって彼はかなりモテるだろ」

 史人のからかうような口調に、私は目の前の風景に動揺して何も答えられなかった。
 あの女の人……確か、今彼の部下だけど……。噂は少し聞いていた。
 
 すると史人が真顔で声色を変えて言った。

 「ごめん、香那。何かあったら言ってこい。近くにいるんだ、仕事を理由にして相談にも乗れる」

 「……ん。ありがとう」

 そう言って、駅で別れた。

 
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