御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 すると本当に怒った顔でこちらを睨んでいる。なんだ、何があったんだ?

 「それは、誰の台詞ですかね?こちらこそ、聞きたいですけど。タクシーに酔っ払った女性と一緒に乗って、こんな時間まで何してたの?彼女の部屋にでも行ったのかしら?」

 驚いた。どういうことだ?見てたのか?

 「やっぱり行ったんですね……あの人見たことあります。初の女性課長でしょ?大阪から来た……異動連絡の冊子で見ましたよ。大きく出てたし……あの短い髪すぐわかる。英嗣さんとの噂も聞いたことがあって……」

 香那がこんなに饒舌に話すのは初めてだ。俺は驚いて言い返すのが遅れた。

 「勘違いするな。酔っ払って住所が言えなかったから、車中で聞き出して、部屋へ放り込んで戻ってきた」

 こちらをじろりと見ている。

 「お前こそ、あいつと何話した?付き合ってること言ったんだろうな?」
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