御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 翌週。

 社内で異母弟に廊下ですれ違った。

 「椎名取締役」

 「ああ。元気にやってるか?新人君」

 そう言うと、あどけない笑顔でこちらを見た。こいつは甘えん坊だが、かわいいところもある。一人っ子同士だからわかり合えるところもあるし、御曹司の苦労もお互い様だ。共通項があるのだ。

 「ええ。おかげさまでなんとかやれています。父さんにどうしようもない奴という噂が行く前に、義兄さんに止めてもらわないと……」

 「とにかく、仕事に慣れてくれば大丈夫だ。誰よりも商品知識はあるだろ?お前のおじさんが英才教育したと俺に自慢してるからな」

 専務は彼に会社のパンフや業績などを大学時代から教え込んでいたらしい。
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