御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 最初にパンフレットを作ったときに、本部長が私のその風景を書いた文章を褒めてくれた。

 そして、自分もそういう家庭がいいなと何気なく話してくれたのが嬉しかった。

 別に彼とどうこうなるとか考えたわけではなかったけど、そう思ってくれる人が男性にもいて嬉しかった。

 仕事の打ち合わせが終わったとき、史人から聞かれた。

 「香那、あの日あれから大丈夫だったのか?椎名さんの件……今度またふたりで飲みに行こう。見せたいインテリアの店もある」

 あのときタクシーに女性と乗り込む彼を一緒に見てから、どうやら私のことを彼が大切にしていないと思ったのか、勘違いさせたのかもしれない。私があの話をするのもどうかと思うので、あれ以降あのことは何も話していないのだ。

 そういえば、本郷さんから椎名不動産の担当者さん達と明後日飲み会がありますと言われた。

 「会社同士の飲み会があさってあるそうですよ。お疲れ様です」

 他人事のように返事をして別れた。
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