御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい
「……そうか」
「彼女の夢です。結婚後の家庭の夢……俺はそれを聞いた時、実現できないかもしれないと彼女に言ったんです」
俺は驚いて彼を見た。あまりに悲痛な顔で何も言い返せなかった。
「その時は冗談みたいに軽く返事をしました。彼女の夢もそこまで前から考えていたとは知らず……それ以降、彼女はどこか変わった。俺もそんな彼女に愛情が冷めてしまって別れた。やっとわかりました。彼女は……」
「香那は慎重だ。仕事ぶりを見るとよくわかる。自分のものにするまでに時間がかかり、それまでは弱くて自分に自信がない。だが、自分のものに出来たとき強くなる。そして、目標に向かって努力もできる」
柿崎君は酒を飲み干した。そして俺を見て言った。
「再会したとき、雰囲気が変わっていた。自立したんですね。大人になったし、綺麗になった。全部あなたがしたことですね?」
「……さあな」