御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 そう言って、さらに私の腕を引っ張って、非常階段のドアの中へ押し込んだ。

 そうして、壁ドンならぬ、壁トンとされて顔を上げたら至近距離に本部長のアップ。

 私はびっくりして目をつむったら、首をそおっと押さえて、絆創膏をゆっくり剥がす。

 「痛いか?」

 「……い、いえ」

 怪我しているところを本部長の指がなぞった。くすぐったい。

 「まだ、赤い筋が残ってる。しかも周りも赤くなってるな」

 そう言って、ポケットから軟膏を取り出して塗ってくれて、その上から新しい絆創膏を優しく貼ってくれた。

 「薬とか準備してきてくれたんですか?」

 「お前、適当そうだからな。俺のせいで傷つけたくない」
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