御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい
 
 「香那ちゃんはちょっと天然ですが、根性があります。ゆっくりですが、正確です。そして、これが一番本部長にとって大切だと思いますが、きっと臆することなく本部長に意見も出来ると思います。彼女以上の引き継ぎ相手はいないです」

 確かにその通りだったかもしれない。吉崎には見えていたのかもしれない。

 イベント後、父に呼び出された。
 
 「新しい商品をイベントで発表し売り出した。パンフレットの文章が好評で多くの若いマンションに住む夫婦や子供連れの家族がそのパンフレットに書いてある商品を買いたがる。このパンフレットの文章を書いたのは誰だ?」

 「一部所属の吉崎の後輩で水川という二年目の女子社員です」

 「ふーん。そうか、まだ若いんだな。この文章は彼女の憧れかもしれんな。その憧れの生活の一部分をこの商品達が担ったというわけだ。彼女は逸材だな。仕事ぶりはどうだ?」

 「最初は時間がかかるのですが、慣れてくると恐ろしいほど正確です。俺の仕事もやっています」

 父は驚いたようにパンフレットから顔を上げて俺をじっと見た。
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