御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 「本部長。私がふがいなくてすみません。紗良先輩は全部やってましたよね……」

 「あいつは何年目だと思ってる。お前くらいの時があいつにもあったんだ。心配すんな」

 「……でも。橋本君にも悪いし」

 「いや、別にいいよ。本部長がそれでいいって言うんだからいいんですよね?」

 橋本は逸材だ。いずれこの会社の中枢に必ずなる。物わかりも良いし、人当たりもいい。

 「もちろんだ」

 そう言うと、うなずいてやる。
 ふたりは疲れた顔をして帰って行った。

 十月に大きな異動があるこの会社では、九月の終わりに内示がある。

 俺はこの子会社では上司に当たるのは社長の父しかいない。
 父から急に呼ばれたので、異動関係かと思っていたら話を聞いて驚いた。
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