御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい
「……田村、あいつ」
田村とは、吉崎の同期であいつの夫だ。俺の部下だったが、大阪へ行って成果を出してしかも最速で東京へ戻ってきた。仕事はできる。俺とはタイプが違うのは確かだ。吉崎もあいつに結局持っていかれた。俺とは犬猿の仲だ。
俺が複雑な思いをしているところでさらに言われた。
「英嗣。お前を本社と子会社の兼務にさせる。期限付きだ。来春には完全にこちらへ戻らせる。本社の役員室勤務だ。俺の右腕になってもらう。役職は取締役。こちらの子会社の黒字はお前の成果だ。他の奴らには文句ひとつ言わせないから安心しろ。お前の実力は本社では有名だしな」
「……あなたの奥さんは大丈夫なんですか?」
会社の連中が何を言おうと怖くはないが、あの義理の母だけは面倒だ。あれでも一応一流企業の社長令嬢。取引もある。何かあればただでは済むまい。
「任せておけ。お前に迷惑はかけない。会長も亡くなった。俺のいいようにしていく」