臆病な私の愛し方

映画館で…

 しかし、相変わらず私はテイキさんの気持ちがわからなかった。

 自分からは話をしてくれない。
 話しかけても素っ気ない感じで返事が返ってくるため、いつ話し掛けていいのか、そもそもどう話し掛けたらいいのか分からなくなってしまう。

 目を逸らされてしまうこともある。

 もしかしたら私が嫌になったのかもしれない、何かもっと気に障ることをしてしまったのかもしれない…

 そう思っただけで私は悲しくなった。


 ある日、私は一つの考えに至った。
 テイキさんは何も話してくれないけれど、もしかしたら疲れが溜まっているのかもしれない。

 それなら素っ気ないのも仕方のないこと。
 これほど本人に聞きづらいのなら、悲しむ前にテイキさんの気持ちをよく考えてみるべきではないだろうか?
 私はテイキさんの彼女なのだから。

 それなら、少しリラックス出来るようにしてあげたらどうだろう?
 私は必死に考える。

 そして私が思いついたのは…


「…テイキさん。今日は一緒に映画を観に行きませんか…?」

「映画?」

 やっと取ってもらった一緒のお休み、私は思い切ってテイキさんを映画に連れ出すことにした。

 チケットは買ってある。

 リラクゼーション要素の入ったドキュメンタリー映画だ。

「…テイキさんには退屈かもしれなくて、本当に申し訳ないんですけど…」

「ナツが行きたいならいい」

 テイキさんの素っ気ない返事。

 安直かもしれないけれど、これで少しでもテイキさんがリラックス出来たら…

 私は一縷の望みを掛けてテイキさんと館内に入っていった。


 落ち着いたナレーション。
 静かに切り替わる自然がいっぱいの映像に、緩やかで綺麗な自然音や音楽。

 おまけに隣にテイキさんがいてくれる安心感で、私は徐々に眠くなる。

 そういえばここしばらく、テイキさんのことについての心配ばかり。
 とうとう緊張の糸が切れたのかもしれない。

 それに、なんだか温かい…
 何かに包まれているようなそんな心地だった。
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