臆病な私の愛し方
 何とか気持ちを奮い立たせてテイキさんの通う職場の近くに辿り着くと、ちょうどテイキさんが出てきたところだった。

「た、たすけて…テイキさん…」

 私は震えが止まらず、駆け寄ってきてくれたテイキさんに縋り付く。
 テイキさんは酷く心配そうに私の顔を覗き込んだ。

「何があった!?」

「…おじさん、もしここにまで来たら…もう私…助けて……」

 やっとそれだけを言い終えた私は、テイキさんに会えた安心感で膝から崩れ落ちる。
 もう、一人で立っていることもできない。


 私はテイキさんに抱えられて駅に向かい、二人でタクシーに乗り込んだ。

 温かいテイキさんの腕に、バクバクと激しく音を立てていた私の鼓動が徐々に収まっていく。

 今度こそ、テイキさんに全て包み隠さず言おう…
 テイキさんなら、きっと聞いてくれる…
 きっと分かろうとしてくれる…


 テイキさんの家に着くと私をベッドに寝かせてくれた。

「ナツ、家に着いた。食事はどうだ?」

 そう尋ねられたけれど、食欲まではまだ戻りそうにない。

「…ご飯は…平気です…」

 テイキさんはそれを聞くと頷き、私のそばを離れようとする。

 …今、一人にされたら…

 私は急いでテイキさんに縋り付く。

「すぐそばにいて、手を握っていて…一人は怖いです…!」

 それを聞きテイキさんは少し困ったような表情に変わってしまったけれど、私の手をそっと握ってくれた。

「…テイキさんの手、あったかい…」

 思わず涙がこぼれる。
 こんなにもテイキさんがいてくれて安心できるなんて…

「…テイキさんがいてくれて、良かった…」

 私はテイキさんの温かい手を感じながら、そのまま眠ってしまった。
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