ふたりぼっち
食べ終わった食器をシンクに持って行って洗っていると、母さんに心配そうに訊かれる。僕はため息を吐きたいのを堪え、淡々と言った。

「別に、部活とか興味ないし」

「お友達は何か部活に入るんでしょ?一緒に入ったら?」

「みんな入る部活、バラバラだから」

「でも、興味ある部活くらいあるでしょ?」

僕は社交的で友達の多い兄や妹とは違って、内向的で暇さえあれば読書をして時間を潰している。話したい時に話せる友達はいるけど、兄たちみたいに多くはない。そのことを母さんたちは気にしていて、「もっと色んな人と話さないと!」っていつも言ってくる。

この話だけを聞くと、僕のことを心配するいい親に思えるだろう。でも実際は違う。社会的地位の高い医師という仕事に就いている二人にとって、子どもは二人を輝かせるアクセサリーのようなもの。だから、社交的で頭がいい自慢の子どもになってほしいんだと思う。

「行ってきます」
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