御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?
「苺花」
「のんちゃん・・・」
控え室で椅子に座っていると、のんちゃんがやってきた。
「のんちゃん、ラストダンスは?」
「ばか。親友がこんな時にのんきに踊ってられないでしょ」
「・・・・・・ごめんね」
きっとのんちゃんは結城くんと踊る予定だったと思う。結城くんにも申し訳ない。
「大丈夫?」
「・・・・・・私、自分が嫌だよ。なんでこんなにはっきりできないんだろう。・・・加瀬くんと踊るつもりだったのに・・・・・・氷上くん見たら・・・」
膝の上に置いた手にぎゅっと力が入る。
「好きなんだね、氷上が」
「・・・・・・でも・・・私なんかが好きになっても、どうしようもない」
「なんで?」
「だって、氷上くんは大財閥の御曹司だし・・・一般庶民の私なんか、相手になるわけないよね・・・」
だったら諦めろよって自分で自分に何回も思ってるのに。
「まあ、うちらからしたら、正直訳わかんない存在だよな。住む世界は違いすぎるし、価値観違うこときっといっぱいあるだろうし」
でもさ、とのんちゃんは続ける。
「一般庶民がそういう人、好きになっちゃいけないのかな?なんで?何かの罪?同じ人間なのにな」