御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?


氷上くんは私の隣へ移動するとゆっくりと腰を下ろした。


「いいんちょーさ、俺のこと、避けてるよね?俺、なんかした?何かしてたら謝るから言って」

「いや・・・」


氷上くんが謝るようなことは何も。


私が勝手に避けてしまってるだけだから。


「俺のこと、嫌いになった?」

「・・・いや、そんなことはっ」


少し自信なさげな声色から、氷上くんがどんな顔をしているのか、見なくても想像がつく。


今は見れない。


今見てしまえば・・・たぶんもう、抑えられなくなる。


私は俯いたまま、自分の足先を見つめていた。


「じゃあ、なんで?」

「・・・・・・っ」


あなたが好きだから。


ぽろっと出てしまいそうで、喉の奥でぐっと堪えた。

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