御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?
「加瀬くん・・・あの、」
私と加瀬くんは近くの空き教室に入って向き合っていた。
「ちゃんと返事してなくてごめん。なのにあんな騒ぎにしちゃって・・・最低なことして・・・本当にごめんなさい」
拳をぎゅっと握って頭を下げた。
「・・・・・・いいよ。いや、良くはないけど、俺のこともちゃんと考えてくれてたってことだろ?それに、認めたくはなかったけど、なんとなくわかってたし」
眉を下げて笑う加瀬くんを見て罪悪感に押しつぶされそうになる。
「・・・・・・本当にごめん。でも私・・・・・・やっぱり氷上くんが好き、なの」
「うん」
「だから、加瀬くんとは付き合えない。本当にごめんなさい」
「うん。それで、氷上とはうまくいったんだよな?」
コクッと頷いた。
「そっか。・・・・・・まぁ、でも俺、諦めないよ」
「え・・・?」
「高沢には幸せになって欲しいと思ってるから邪魔はしないけど、氷上が高沢を泣かせるようなことがあれば・・・・・・その時は、俺が高沢を幸せにするって思ってるから」
真っ直ぐに見つめられ、言葉を失くしてしまう。
「俺は、高沢と同じ一般庶民だし、金持ちでもなんでもねーけど、それでも高沢をずっと笑顔にできる自信はあるよ」
「何言ってんの?」
私たちの間に漂う空気を切り裂くような低い声に、バッと入り口を振り返った。