御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?
「・・・・・・ほんとにするの?」
「うん。して」
琳凰くんの腕は私の背中に回されたままで、簡単に脱出できそうにもない。
犬が尻尾を振って待っているようなキラキラした瞳の奥に、静かな獣が見え隠れしている。
ちょっと前に中庭でキスしたばかりだけど、自分からするなんて・・・それはまた話が別だ。
改めて近くで見ると整い過ぎている綺麗な顔。
目の前で待ち構える女の私でも羨ましくなるくらい形の良い唇。
ドッドッドッと胸の音が耳から頭の中まで響き渡っている。
「っ・・・・・・や、やっぱり、無理っ」
無意識に止まっていた息をハァっと吐き出し俯いた。
無理無理。やっぱり私からなんて無理だよ。
「・・・・・・しょうがないな。お仕置きにならないけど、」
そう頭の上から声が降って来たかと思うと、次の瞬間には顎に手を添えられクイッと上を向かされていた。
「もう我慢できないからさ、」
そう言って私たちの距離はゼロになった。
「苺花は俺のだよ。忘れないで」
触れて離れた唇と熱の籠った瞳から琳凰くんの想いが伝わってきて、心が震えた。