御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?


「大丈夫ですか?」


忙しないこの場所に、急にのんびりとした可愛らしい声が入ってきた。


顔を上げると、藤堂さんが心配そうにこっちを見て立っていた。


「あ・・・大丈夫です。ありが」

「いいんちょー。それ、着替えた方がいいね。保健室行こ」


心配してくれた藤堂さんにお礼を言おうとしたら、藤堂さんのすぐ後ろから来た氷上くんに腕を引かれ立たされた。


「桃香、また放課後」

「あ・・・、うんっ」


氷上くんは藤堂さんに声を掛けると、私の腕を引いて歩き出す。


え、ちょっ・・・


「ちょ、おいっ」

「おやおや?」


後ろで加瀬くんとのんちゃんの声が聞こえて、慌てて振り返る。


「ごめん!ちょっと着替えてくる!」


で、いいんだよね?


氷上くんさっき着替えた方がいいって言ってたもんね?


スタスタと長い足で歩くもんだから、こっちは駆け足で必死になってついていった。

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