御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?

「苺花」


っ!


頭に浮かんでいた人の声にびっくりして振り返る。


「琳凰くん・・・っ、おはよ・・・」

「おはよ。そんな驚く?」


琳凰くんは笑いながら靴を履き替えると、手を差し出した。


「行こ」

「う、うん」


一瞬、手を繋ぐことに戸惑ったけど、変に思われたくなくて差し出された手を握った。


自然と恋人繋ぎに握り返され、歩き出す。


握られた手から伝わる体温と、隣を歩く琳凰くんの大きさに安心して、さっきまでの心のざわつきがスーッと消えていく。


大丈夫だ。


私たちなら、きっと大丈夫。


そう自分へ言い聞かせて、琳凰くんの手をぎゅっと握り返した。


「苺花、朝からそんな可愛いことしてどうするつもり?すぐにでも襲いたくなるんだけど」

「え・・・いや、そんなつもりじゃ・・・」


おそ、襲いたくなるって・・・


朝に似合わないワードに顔が熱を持っていくのがわかる。


「フッ、大丈夫。苺花が嫌がることはしないから」


そう言って笑う琳凰くんがもう・・・かっこよすぎて。


これから起こることなんて想像もしなかったしできなかった。



私の決めた覚悟が甘すぎだったということも。


< 127 / 165 >

この作品をシェア

pagetop