御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?
「苺花」
っ!
頭に浮かんでいた人の声にびっくりして振り返る。
「琳凰くん・・・っ、おはよ・・・」
「おはよ。そんな驚く?」
琳凰くんは笑いながら靴を履き替えると、手を差し出した。
「行こ」
「う、うん」
一瞬、手を繋ぐことに戸惑ったけど、変に思われたくなくて差し出された手を握った。
自然と恋人繋ぎに握り返され、歩き出す。
握られた手から伝わる体温と、隣を歩く琳凰くんの大きさに安心して、さっきまでの心のざわつきがスーッと消えていく。
大丈夫だ。
私たちなら、きっと大丈夫。
そう自分へ言い聞かせて、琳凰くんの手をぎゅっと握り返した。
「苺花、朝からそんな可愛いことしてどうするつもり?すぐにでも襲いたくなるんだけど」
「え・・・いや、そんなつもりじゃ・・・」
おそ、襲いたくなるって・・・
朝に似合わないワードに顔が熱を持っていくのがわかる。
「フッ、大丈夫。苺花が嫌がることはしないから」
そう言って笑う琳凰くんがもう・・・かっこよすぎて。
これから起こることなんて想像もしなかったしできなかった。
私の決めた覚悟が甘すぎだったということも。