御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?

「もちろん。最後まで聞かせて」


琳凰くんの目は優しくて、今にも泣いてしまいそうになる。


鼻がツーンとするのを耐えながら口を開いた。



「あのね、琳凰くんと・・・別れたいの」



シーンと静まり返る保健室。


幸いにも私たち以外には誰もいない。


「・・・・・・え?何言って」

「やっぱり私には、琳凰くんの彼女は無理みたい」

「・・・・・・どういうこと?」

「最近、色々考えてたんだけど、琳凰くんや結城くんや藤堂さんたちとはやっぱり住む世界がちがうなーって。進路のことも考えるようになって、そしたら将来のことも考えるでしょ?私はやりたいこともあるし、そっちの方に集中したいなぁと思って」


間違ったことは言っていない。


実際お母さんとお父さんの事があって、またふたりに何かあった時に私が支えなきゃって思った。


そのためにはこのまま特Sで成績上位をキープして超難関と言われる王蘭大学の医学部に入らないと。


夢である医師に最短でなる方法は、それしかない。


「それは、俺と別れないといけないことなの?」

「・・・・・・・・・うん。ひとりになって集中したいから・・・。わがまま言って・・・ごめんね」


琳凰くんの顔が見れない。


ドクッドクッと変な脈が胸に響く。


「・・・・・・わかった」


そう言って琳凰くんは立ち上がり、保健室を出て行った。


扉が閉まった音でシーンッと静まり返る。



「ぅっ、うぅ・・・っ」


ぎゅっと掴んでいるシーツにポタポタと染みができる。


終わっちゃった・・・


本当に終わっちゃった。


でも、これでよかったんだ。



よかったんだよね・・・?


こうするしかなかったんだよね・・・?



「っ・・・」



ごめん。



ごめんね・・・琳凰くんっ



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