御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?
第一話 学園の王子
「「「キャーーッ」」」
VIP科と特Sクラスのある格式高い校舎で毎朝のように上がる黄色い声。
2年目ともなると、それが当たり前のように感じる。
尊敬、憧れ、恋情etc・・・たくさんの視線を独り占めしながら颯爽と教室に入って来た学園の王子、氷上琳凰(ひかみ りお)は、今日もご機嫌に私の隣へ腰を下ろした。
「いいんちょー、おはよ」
黒髪だけど重たさを感じないサラサラの髪。
くっきり二重のアーモンドアイに、スッと通った鼻筋、形の良い唇。
世界中にファンを作りそうな程の整った容姿を見て、神様は不公平だと毎回思う。
ワインレッドのブレザーに同色のネクタイ、グレーのズボンの制服を完璧に着こなしている。
椅子に座って足を組み、ズボンのポケットに手を入れている姿はモデルそのもの。
「おはよう、氷上くん」
「ねぇ、1限目サボっていい?」
「だめです」
「フッ。さすが、いいんちょー」
なんでかわからないけど、嬉しそうに笑って机の上にだらりと伸びる彼。
1年生で話すようになってから何度となく繰り返されているこのやり取り。
入学当初から特Sクラスで一緒で、最初は氷上財閥の御曹司だと皆んなにもてはやされていて、近寄りがたいなと思っていた。
だけど私が学級委員長になってしまい、保健室で寝てばかりいた氷上くんに注意しに行ったことがきっかけで徐々に話すように。