御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?
腕を離してもらえるどころか強く引かれ、バフっと氷上くんの上に倒れ込んだ。
ふわっとシトラスの香りに包まれる。
ふかふかの掛け布団。絶対高級品だ。
・・・・・・なんて、そんなこと思っている場合じゃない。
せ、背中に腕回されてるし!
身動きが取れない!
「ちょ、ちょっと、氷上くん!?離してっ」
「・・・・・・嫌だ。いいんちょーは俺のでしょ?」
「な何言ってるの!?」
バタバタと手足を動かしなんとか氷上くんの腕から逃げ出した。
バクバクバクバク
心臓がものすごい早さで動いている。
「氷上くん・・・、こんなことしちゃだめだよっ。好きな人が・・・藤堂さんが、悲しむからっ・・・・・・体調悪くないなら、次の授業出てね!じゃあ、私先に行くからっ」
そう告げて足早に保健室を後にした。
なに・・・なに・・・、
なに言ってるの、なにやってるの氷上くん!
ドクドクドクドクと心臓はまだ落ち着きそうにない。
ダメじゃんこんなことしちゃ・・・
あぁ〜・・・藤堂さんに合わせる顔がないよ。どうしよう・・・
なんなの?気まぐれ?からかっただけ?だったら、なかったことにしてあげるから、もうこれ以上変なことしないで欲しい。お願いだから。
そう思いながら歩くスピードを早めた。