御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?
「じゃあ俺、今日部活あるから行くわー。また明日な!」
「うん、加瀬くんバイバイ」
「がんばれよー」
放課後になり、部活へ行った加瀬くんを私とのんちゃんはまだ席に座ったまま見送った。
「バイバイ」と「ごきげんよう」が入り交じり、教室はがやがやと賑やかだ。
「うちらもそろそろ帰る?」
「うん。そだね」
のんちゃんと一緒に席を立ったその時、
「あー!いいんちょーさんっ!ちょっと待って」
後ろから陽気な声で呼ばれ振り返ると、結城くんが人ごみを縫いながらこっちに向かって来ていた。
「これこれ、このノートさ、琳凰の家に届けてくれない?」
「・・・・・・。えっ?」
「あれ、聞こえなかった?このノート、琳凰の家に届けて欲しいんだけど」
「えっと・・・・・・私が?」
「うん。いいんちょーさんが」
「えーっと、氷上くんのお家に行くの?」
「うん。場所送るからさ、連絡先教えてよ」
え、なになに、何が起きてるの?
氷上くんはあれから結局、授業は出ず早退したみたいだから忘れ物?のノートを届ける必要があるのはわかる。
でも、私が氷上くんちに?
な、なぜ?