御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?
目の前には見上げるほど大きな重厚感漂うヨーロピアンテイストの門。
その奥には立派な噴水。
そして、その後ろには3階建てだけどどれだけ続いてるのってくらい横に広い建物。
・・・・・・結局一人で来てしまった。
目の前の光景に口がポカンっと空いたまま塞がらない。
これが・・・氷上くんのお家・・・
ちょっとは想像してみたけど、想像を遥かに超えてきた。
ここに住んでいるの・・・?
自分とは全く別世界の人なんだと改めて思い知らされ、足がすくむ。
と、とりあえず、このノートを渡せばいいんだよね。
えっと、インターホンは・・・
あった。
小走りで駆け寄り、少し震える指で押した。
「はい。どちら様でしょうか」
使用人さんだろうか、お母さんぐらいの女性と思われる声が聞こえてきた。
「あの、氷上くんの同級生の高沢と申します。忘れ物を届けにうかがいました」
ドキドキドキドキ・・・
これで大丈夫かな。ここまでくる途中、何度も心の中で練習した。
「少々お待ちください」
そう言われて、しばらく待っていると門がキィ〜ッと開き始めた。
「どうぞ、中へお進みください」
再びインターホンから声がかかり、恐る恐る門の内側へと足を踏み入れた。